先日、出張中の夫から神妙な声で「わるいけど、病院に行って精密検査の予約をしておいて」と電話がかかってきた。 「どうもおかしいんや」と言う。 「どうしたの?」と聞くと、 「おやじが癌で亡くなる前は、どんな症状やったかなぁ?」と逆に聞き返される。 「なんで?」と聞きなおす。 「腹が張ったような気がするし、肩や腰が痛いし、心臓がバクバクいう気がするし・・・」 「わかった。じゃあ、明日仕事に行く途中に病院によって予約しておくから」と言って、電話を切った。 そして昨夜、出張から夫が帰ってきた。 「どう?大丈夫?」と開口一番に聞いてみた。 すると、「ああ・・・、わからん・・・」と言いながらうつむいて廊下を歩く。 今夫に倒れられたらこまるので、私が心配そうに後ろをついて歩くと、それを見ていた娘も心配して、一緒につき歩いた。 きっと、夫は心配してもらえることが嬉しかったのだろう。 その夜、晩酌で上機嫌になってしまった。 「おやじは癌になったときには酒も飲めんかったよなぁ。でも、ワシは飲めるんや」 (自分も癌って言ってるのかなぁ…。私はお酒が飲めないけど、あんた今夜は結構飲んでるよ…) 「肩がものすごく痛いんや。おやじも痛いって言いよったよなぁ」 (私も肩が凝って眠れないときがある…。肩が痛いと言うと、ワシもや!と言って、結局私がマッサージする羽目になる…) 「おやじは地下鉄の階段を上がったら息が切れるって言いよったよなぁ。ワシも最近バクバクするんや」 (私はずーっと前からバクバクする…!) 「やっぱり、癌かもしれんなぁ」 (じゃあ、私も癌じゃん… アホらし!) 夫はやや呆れ顔の私や娘に見守られて、昨夜はそのまま寝てしまった。 そして今朝、夫は予約していた病院に行った。 一応心配だったので、お昼休みに「どうだった?」の電話を入れた。 「胃がちょっと弱っているんやろうと言われた」 (やっぱり・・・・。あの食欲と上機嫌は癌じゃないよ・・・・・) と思いながら、「良かった!」と言っておいた。 末娘も心配して昼間父親の顔を見に里帰りしたらしく、今夜は一段と上機嫌だ! 私は肩や背中がピリピリして痛い上に、頭痛がひどい! 癌だとはしゃぐ人はほっといて、一人で早く寝よっと…。 オヤスミ!