2005年11月1日火曜日

紅葉と枯葉・・・

山が色づく季節になった。
世の中の人々は『紅葉』だと言う。

春一番に撫でられた枝が芽吹き、初夏の風にあおられて新葉が萌える。
モクモクと萌える新緑も、セミが鳴く頃には青々と茂り、まるで夏の光を自在に操るように、
キラキラと輝く。

大きく、逞しく、一途に太陽に向かって伸びる枝。
この勢いには終わりが無いと錯覚させる。

風が吹くと山がうねるほどの葉枝。

私はここまでのどの過程を取っても好きである。
一つ一つの過程がその都度心をときめかす。

でも、山や葉が風を生む勢いも、ある日を境に風に押されるようになる。

風の温度が急激に下がり、葉ずれの音が変わってくる。
さやさやと奏でていた音が、かさかさと悲しげに鳴る。

私が殊の外好きなのは、実はこの時期の山。

山は事の次第を全て受け入れ、風に身を任せる。
「自分の限界を知る」のではなく、「自分の時期を知る」のである。

葉は日に日に色を変え、そして枝から離れていく。
決して枝にしがみつくことはしない。

多分そこのところが人々の心を打つのだろう。
その行為が美しいと思い、愛おしいと思い、郷愁を抱かせるのだ。

だから人々は「枯れかけた葉」とは言わず「紅葉」と讃える。
そしてなにより、確実に去年より枝が広がっていることを知っている。

地面に落ちた枯葉がカラカラと地面を転がるのも、間もなくであろう。